ECに特化し好調をキープする、独自のファッションの売り方
Text:Etsuko Soeda
Edit:Masumi Sasaki
メンズカジュアル部門で売上1位を目指して
——MONO-MARTの成り立ちとは?
10年前、まずはブランド「MONO-MART」から始まりました。その頃はECサイトがまだ発展していない時代でしたが、会社としては、今後ECがより拡大していくという予感がありました。そこで低単価でありながら質のよいものを、ECサイトを通じて発信していこうという想いでスタートしています。ちょうどファストファッションが流行りだしたのですが、多くはレディースがメインで、メンズ市場にはあまりブランドが多くない状態でしたので、我々が最初に低価格帯のメンズファッションを引っ張っていきたいという気持ちもありました。
——MONO-MARTのオリジナル/セレクトアイテムの割合は?
当初はOEMでメーカーと交渉しながらオリジナルを製造販売していましたが、次第にトレンド性を取り入れたセレクトアイテムも扱うようになりました。今は、オリジナルとセレクトの割合が4:6くらい。MONO-MARTでは「KANGOL」は特に人気ブランドなのですが、今世の中で「当たり前」だとか「ヒット」しているものを的確にキャッチするようにしています。
——現在は5ブランドを抱えていますが、それぞれの特徴は?
「MONO-MART」がカジュアル、ストリートをイメージしているのに対し、創業5年目に立ち上げた「EMMA CLOTHES(エマ クローズ)」は都会的で洗練されたウェアと伝統的なデザインや魅力的な着こなし、「BARK MANHATTAN(バークマンハッタン)」は日常に寄り添う、今あるべき自然体なスタイルを提案しています。それから2019年11月に自社ECサイトを立ち上げるタイミングで誕生したのが、Z世代を意識した韓国系のメンズストリートブランド「BASQUE magenda(バスクマゼンタ)」と、初のレディースブランド「Chaco Closet(チャコクローゼット)」です。
——ECモールでは売上を着実に伸ばしてきたが、どのように成長してきたか?
試行錯誤を重ねながらこれまでやってきましたが、世の中の人々のニーズと我々がやろうしたことが、その時々でうまくマッチしたのではないかと思います。会社としてまずは楽天で売上1位を取るという大枠の目標を持ちつつ、状況が変わればそれに合わせて常にフレキシブルに動いてきました。例えば商品写真も最初は着用モデルの顔を入れず掲載していたのですが、途中から顔まで含めた画像に切り替えました。また商品の動きが良くなければ、ヴィジュアルを撮り直すこともありますし、お客様にいいなと思ってもらえるものを具体的に文章で表現するなど、臨機応変に対応してきました。
他にも様々なECモールとお取引してきましたが、成長へのターニングポイントの一つとなったのは、ZOZOTOWNとの出会いかと思います。出店をスタートすると非常に反響があり、実際に売上も好調に増進、ZOZOTOWNのブランドランキング上位にも入るようになりました。担当の方とも良い関係を築くことができています。
実店舗がない分、ページ自体が接客になりますので、いかにお客様に商品の内容を伝えられるかが重要だと思っています。同時に、スピード感を特に重視していて、ECにとって常に世の中の流れに合わせていくことが必要不可欠だと思うので、それを実践できていることが我が社のメリットだと感じています。
各ブランドの住み分けと自社ECサイトが担う役割とは
——5ブランドそれぞれの自社ECサイトの立ち上げにはどんな狙いが?
より多くのお客様にブランドのことを知ってもらいたい、また既存のお客様とよりインタラクティブな関わりができる場を作っていきたいと思っていたところ、ZOZOTOWNの担当の方から、ZOZOグループの取り組みであるFulfillment by ZOZO(FBZ)を紹介されました。セレクトアイテムなどは売れ行き傾向によっては、取り扱うブランドを変更することもあるので、ZOZOTOWNと自社ECの在庫拠点を一元化することができれば、在庫効率と運用効率という点でベストな選択だと考えました。
——自社ECサイトとECモールへの出店とそれぞれの位置付けは?
「MONO-MART」や「EMMA CLOTHES」は特に、ECモールはブランド認知の入り口として大切な場と捉えており、自社ECサイトではよりブランディングとしての機能を確立したいと思っています。自社ECサイトは店舗でいう直営のフラッグシップショップ、一方でECモールは百貨店への出店という位置付けですね。
——これまでメンズファッション市場を開拓してきたなかで、遂にレディースに着手した理由は?
「Chaco closet」はコアターゲットをママ世代に設定しています。20代前半〜のレディースブランドは飽和状態ですが、少し年齢層高めの20代後半〜30代後半をターゲットにしたマーケットにはまだ需要があるのではと考えたからです。社内でもレディースブランドを立ち上げたいという声は以前から上がっていたので、まずは試験的な意味もありますがこの機会が最適だと考えました。またこれまでやってきたメンズブランドともまったく異なる世代に向けた「BASQUE magenda」に関しても、韓国系ストリートファッションが若い世代に人気があるということと、会社としてできることの幅をより広げていきたいという思いがありました。
——構想から商品化、ECでの展開まで、ブランドを立ち上げるための期間は?
仕入れなどを含め、構想からだいたい半年くらいです。FBZを導入し、ZOZOTOWNをベースに在庫を一括管理しているので、非常に管理がしやすく最短期間で実現できるのは魅力だと感じています。
数あるECサイトと差別化を図る、ブランドの世界観
——ECでの卓越した販売力の秘訣、特に注力している点は?
これまで10年間、トライ&エラーでノウハウを築き上げたなかで特に心がけていることは、他のブランドにはない見え方を追求するというところでしょうか。ECモールにはそれこそものすごい数の商品が一堂に会しているので、埋もれないようなヴィジュアルづくりには工夫を凝らしています。例えば、検索結果一覧でも目立つように背景色をカラーにするなどして、ページ上で写真が映えるよう心がけています。
——あえて撮影は自分たちで。こだわりのヴィジュアルはどのように作られているのか?
ZOZO側で撮影いただくことも可能な中、「MONO-MART」と「EMMA CLOTHES」は社内で撮影、それ以外の3ブランドは外部に委託し、ディレクターを立てて撮影を行なっています(※1)。「MONO-MART」に関しては自社の専属モデルにMUSASHI(下画像:右側がMUSASHIさん)を起用し、商品の魅力を伝えるブランドの顔としての役割を担ってもらっています。彼はSNSやYouTubeで多くのフォロワーを抱えているので、最新の情報発信を行うという非常に重要なポジションとなります。一方、「EMMA CLOTHES」は外国人モデルを起用しており、他のブランドとの差別化を図っています。先ほどお伝えした通り、背景の色味でも視認性を高めたいので、既存のバックグラウンドを使うだけでなく、時には自分たちでペンキの色を塗り替えたり地道な努力をしていたりもします(笑)。また、ブランドによってはスタジオよりシチュエーションがわかりやすいようロケ撮影を多用するなど、それぞれの世界観を作るようにしています。
(※1:FBZでは、撮影・採寸、商品情報等はZOZOTOWN分が自動的に自社ECへ反映されるしくみとなっています。通常、撮影を含めたささげ対応はZOZO内で行っております。)
——世の中の動きを察知するためのリサーチ方法は?
メーカーの担当者の方やインフルエンサーから話を聞いたり、街や新しいスポットをリサーチしたり、スタッフからアイデアをあげてもらったり、ファッション情報誌から情報を吸い上げたりとさまざまな方法で行なっています。MUSASHIが発信する情報への反応を参考にしたり、WEARISTA(※2)に衣装を提供するなどインフルエンサーとコラボレートしたり、時代に合わせて、ユーザーが今何に興味があるのか、どんなことに反応して、どんな商品が売れるのかを常に研究しています。
(※2:WEARISTA(ウェアリスタ)…ファッションコーディネートアプリ「WEAR」で、センス溢れる着こなしやトレンドを取り入れた着こなしを発信するWEAR公認のファッショニスタです。)
まずはオープンさせた直営のECサイトでブランドとしての地位を固めていき、結果を見ながらできることをやっていこうと考えています。よく実店舗の展開について聞かれますが、今のところ予定はありません。その代わり、それぞれのブランドの成長・拡大や新規ブランドに注力していきます。スピーディにものごとを進めていくことが我々の強みでもあるので、今後もお客様に求められるアイテムを即時に少しでも多く届けられればと思います。