ECサイト急成長のポイントは、会員情報の一元化と新作をダイレクトに伝える仕組みづくり

アメリカ西海岸のカジュアルスタイルを提案するブランドとして、幅広い世代に支持を得ている「coen(コーエン)」。全国にショップ展開を続けるなか、ECによる売り上げの成長率は前年比150%。販売戦略部を率いる菅松剛士氏と辻千尋氏に、成長の要因や、成果が出ているEC施策、今後の展望についてお聞きしました。

Photos:Ayako Masunaga
Text:Etsuko Soeda
Edit:Masumi Sasaki

団塊ジュニア世代のファッションの原点、アメカジ回帰

——ブランドの立ち上げの経緯、コンセプトは?

coenは2008年に誕生しました。アメリカンカジュアルスタイルを表現するブランドで、ショッピングモールを中心に、手頃な価格とスピード感のある商品展開が特徴です。ブランド立ち上げの年はちょうどスウェーデン発のファストファッションブランドが日本に上陸し、話題になりました。こうした時代背景のなかで生まれ、独自のテイストを打ち出しながら、現在では全国に85店舗(2019年3月末)、ショップスタッフ約700人を擁するブランドへと成長しました。

——なぜアメリカ西海岸テイストだったのか?

もともと団塊ジュニア(現在40代〜)をコアターゲットとしてスタートしました。その世代の多くの人は、ファッションに目覚めた年頃にアメカジを経験しています。またトレンドに関係なく、定番と呼べるベーシックな魅力があると考えています。現在では団塊ジュニア世代の方はもちろん、お客様の層が本当に幅広く、大学生から50代くらいの方にまでご愛用いただいていますね。

——ブランドの核となるアイテムは?

オックスフォードのボタンダウンシャツはブランドを象徴するアイテムのひとつです。胸の部分にクマのアイコンが刺繍されているのですが、これはカリフォルニアの州旗からヒントを得ています。ブランドのベースとなるアイテムはチノパンやUSAコットンのカットソーなどモデルチェンジを繰り返しながらロングセラーとなっているものがいくつかあります。
例えば、チノパンは以前は軍モノのパーツの作り方を取り入れたりしましたが、現在ではボタンがたくさんついているものよりもジップで開閉できるほうがよりユーザーフレンドリーと考え、時代に対応しながら少しずつ変化を加えています。ドライ感のある仕上がりが特徴のUSAコットン製品も定番商品です。

ブランドの成長とともに躍進するECサイト

——店舗とECサイトそれぞれの役割は?

ブランドスタート時から店舗とECは互いに補完関係にあると掲げてきました。当初はブランドの認知度がまったくない状態でしたので、ECモールのみで販売していました。自社ECサイトを立ち上げたのは2013年。店頭でcoenを知っていただくことが非常に多く、ブランドを認知した上で、時短を意識する忙しい方たちが商品を購入できる受け皿としてオンラインショップを捉えています。
一方、オンラインで情報を得てから来店し、実際に商品を見たい、触れたいという行動パターンも増えてきました。そのため今はオンラインとオフライン、どちらも使いやすいような工夫を心がけ、お客様のスタイルに合わせて店舗でもECでも利用しやすいほうを選んでいただければと考えています。ECはいわば365日24時間営業しているcoenの店舗です。

——自社ECサイトの売り上げは昨対比約150%の成長。その要因はどこに?

ZOZOと取り組んだ2つの施策が大きな転機になりました。1つは、ブランドサイトとECサイトの統合です。それぞれのサイトに情報が散っていて、お客様にとってcoenのどの情報をどこで得られるのかが分かりにくい状態でした。それを1つに集約することで、「このサイトに来ればcoenの情報が集まっている」という認識を持っていただけるようにしました。それに、今はスマートフォンで利用される方が大多数なので、求めている情報へのアクセスのしやすさは以前よりも重要になってることも大きいです。

——1つには、サイトの統合。では、もう1つの施策は?

以前は店舗とECで会員情報が別れていて、1人のお客様データを1つに管理できていませんでした。それぞれにポイントサービスがあってお客様も不便だったようです。そこでアプリを活用して会員情報を一元化し、お客様が店舗、EC共通でポイントを貯めたり使ったりすることができるようにしました。
同時に、coenにとっても店舗、ECをまたいだお客様の動きを把握できるので、今後の取り組みにも活かせるようになりました。あとは、サイト内のコミュニケーション機能を強化したことも挙げられます。

——具体的なコミュニケーション機能の強化とは?

わかりやすいデザインで、お客様が求めている情報を的確に発信したいという思いがありました。リニューアル前の分析の結果、新作をチェックするユーザーが多いことがわかりましたので、サイト上では、常に新作を分かりやすく表示し、かつメールでも新作情報を発信することにしました。また、お客様により能動的にサイトを活用してもらえるよう、お気に入り機能も実装しました。

——ショップスタッフによるコーディネート写真を投稿できる「スタイリング」コンテンツの効果は?

スタッフ自ら投稿できる仕組みに変更したことで、よりリアルタイムでのアップデートを実現しました。投稿するほどアイテムが売れるため、スタッフのモチベーションにもなっていますし、実際にスタッフによるコーディネート投稿が多いアイテムは、未投稿商品の約3倍売れるというデータが出ています。
また、写真とともにスタッフの身長と着用サイズを記載しているので、着用感をイメージしやすく購買の決め手となるケースが多いようです。店頭でもタブレットでお客様にスタイリング画像をご覧いただきながら接客することも増えています。例えば、女性が旦那さまのプレゼントを選ぶときなど、男性スタッフの着用画像を参考にご提案しております。

パーソナルショッパーのようなツールを目指して

——普段の取り組みによる成果は?

新作表示機能以外にも、以前は簡素だった会員様専用機能にお客様の購入履歴を表示できるようにしました。それによって、ログインした状態でトップスを検索すると、お客様のサイズに合ったトップスが表示されるなど、よりパーソナライズドした会員ページを提示できるようになりました。
これも毎月行う定例会議で、さまざまなデータを分析しながら意見交換することで、効果のある・なしが明確になり、課題に集中して取り組みやすくなった結果だと思います。

——データの分析結果によって、独自に試みたことは?

メインとなる購買層は40代の方ですが、20代の方たちにはトートバッグなどのファッション雑貨が売れているということがわかりました。そこでアメカジをベースに、より手に取りやすいラインとして「ユーティリティライン」というメンズのストリートスポーツウェアをウェブ限定でスタートさせました。オンライン展開後、ショップスタッフからも店頭で扱いたいという声が上がり、ショップでも展開していくことになりました。このように実験的な試みができるのもECならではの利点だと思います。

ECチームの今後の目標とミッションとは

人とネット、オンラインとオフラインのシームレス化をさらに強化していきたいですね。会員や情報の一元化まではできました。今度は、お客様が自宅で見た情報を店舗でも最適な形で表示できたらと思います。例えば、該当商品が店舗のどこにあるかがすぐわかるなど、お客様一人ひとりのいわばパーソナルショッパーのように、あらゆるシチュエーションで利用していても、その時々に最適な状態でお客様の役に立つツールを作っていきたいと考えています。

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